kiuelの節操ない読書歴

興味あるもの、なんでも食らいつく

【驚くべき雲の科学】これ、みんな現実の現象です

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平凡な空もいいけれど、珍しい雲も見てみたいなぁーと感じました。そんな欲求を満たしてくれる本がありました。

著者が初めに断っていますが、載っている写真はすべて本物。トリックなしです。

私の選択基準では操作されたり強調された写真は排除する方針であった。そのような手法は写真の持っている気象学的な価値を損なうものでしかないからである(本書は驚異的な雲のコレクションであって、驚異的なレタッチ技術のコレクションではないのだから)。

 書籍データ

【驚くべき雲の科学】リチャード・ハンブリン 村井昭夫訳 草思社 2011年9月30日初版

著者のハンブリンはサイエンスライター。そして製作協力に英国気象局が携わっています。

驚異的な雲たちの姿は、数時間続くとこもあれば数十秒で消え去るものまでさまざまですが、たいがいは儚いもののようです。

 一生かかってもお目にかかれない空や雲が写し出されていますが、でも第4章の「劇的な雲たち」に多く出てくる雷とか竜巻とかには出合いたくないですね😬

ところで、なぜ人は空、あるいは雲を眺めるんでしょうか?ハンブリンはイントロダクションでいいことを言っています。

人生から雲がなくなるということは、単に精巧な惑星のサーモスタットとして働く降雨の機能が失われて、物理的に耐えられなくなるというだけに留まらない。人を創造的な思考へと導く主たる動因の一つすなわち変化しやすく、群がって、頭上を絶えず漂い流れていく思考の泡を、我々から奪ってしまうことにもなる。

“考える”ことの重要性は私、この頃よく思うんです。晴天に恵まれている「不幸」なカリフォルニアの住民は、セラピーを受けている人が多いといいます。空は人の精神に影響を与えるんですね。

さらにハンブリンは私たちへ、驚くべき雲の世界に足を踏み入れることに歓迎を示してくれ、こういいます。

変わり続け動き続ける自然現象の中で最もダイナミックな構造物であり、普段は見ることができない荒れ狂う大気のプロセスを明らかにしてくれる。(略)注目されない〔冴えない〕雲でさえも地球の状態を私たちに教えてくれるのだ。

第1章「雲を上から見る」

そもそも飛行機にでも乗らない限り、雲を上から眺めることなどないですよね。しかも珍しい雲など。

だから感動しました。〈逆光に照らされた頭巾雲〉というタイトルがつけられた写真は、逆光で黒ずんだ積乱雲とは対照的に”天使の輪”みたいに光り輝く頭巾雲が、本当に積乱雲の帽子みたいにちょこんと乗っているように見えるのです。

頭巾雲はやがて、積乱雲に取り込まれ短い一生を終えるのです。この写真は見た人に存在感を長く印象付けるでしょうね^0^

〈上空から見るフォールストリーク・ホール(穴あき雲)〉というタイトルがつけられた写真は、美しくもあり、ちょっと不気味でもあります。

「大きく広がった高積雲が沈む太陽によって下方から照らされて、中央部に煮えたぎった溶岩の湖があるように見えている」

「溶岩の湖」とは言い得て妙です。濃く暗い灰色の高積雲のボコボコとした形が、煮えたぎった感を強めています。

穴なき雲自体珍しいのですが、その穴が光の効果で浮かび上がっているのと、「わずか数㎞上空からとらえた」ということが超レアです。

台風の目の内側って見たことありますか?まず、見ることはないですよね。での本書にはその写真が載ってます。

2,005年8月に出現した〈ハリケーンカトリーナ」の内側〉です。

「風速が250km(秒速69m)」を超えた時の姿は、下方は白ヘビがうねっているように見えるし、上方は厚い雲の“壁”が真っ青な空にそそり立って、雪山シーズンの車道みたいに見えます。想像を超える世界をよく捉えたものです。

第2章「奇妙な形の雲」

これも見ようによっちゃ蛇に見えます。〈西オーストラリアのロール雲〉。

この雲は気象と地形の条件がないとみられないもので、地域特有です。その中でもこのみごとな雲はめったに現れないでしょう。

まっすぐ伸びてるように見えるので、蛇というよりはチキチキマシーン猛レースのレーシングカーが走り抜けたあとみたいです(世代がバレます😅)

【空・雲】で巻雲の塔状雲ってどんなもの?と思いましたが、ここで解決しました。

〈巻雲の塔状雲〉というタイトルの写真は、白鳥が何羽も群れで飛んでいるような姿。「ゆっくりと落下して過ごすので『降水雲』に分類されてもよさそうのものだが、実際は『尾流雲』(つまり地表面に届くはるか以前に蒸発してしまう、寿命の短い氷や雪でできた尾)以上のものになることはほとんどない」。

いろいろな意味で印象深かった写真の1つが〈ハワイのUFO〉と題された写真。

レンズ雲が写っていますが(この雲自体は山で比較的よく見られます)、画像の荒さと、ハワイなのに雪に覆われた山頂に雲の形が相まって、ちょっと不気味だけど、ユニークです。

その雪にスキー板とストックを突き刺し、座り込んで「クラシックなUFO」を眺めている男性がなにか笑えます😅

第3章「光の効果」

1つでも珍しい光景に出会えればラッキーなのに2つの違う現象に出会える人もいるんですね。

環天頂アークとフォールストリーク・ホール〉という写真はまさにそれです。

長ーい舌みたいな穴あき雲の、写真で見ると上方に環天頂アークが見えます。虹よりも色鮮やかに見えるアーク。これについて、イギリスのロイストンヒースで観測されたのを幸運にも写真に収めたジョン。ディードさんのエピソードが載っています。

「9月のある寒い朝、息子をフォットボールの練習に送ったときにこの光景に巡り合った。『息子がウォーミングアップしている間に、私は散歩をはじめた。ふと見上げると、雲に舌のような形をした大きな穴が開いていた。この穴自体、とても面白い現象だと思ったが、その穴の片方の端に《虹》があることに気付いたー(略)さらに下に七色の光る第二の現象があった』」。

さらに、虹が!このエピソードを紹介したのは、すごい珍しい空は、普通の日常に現れるものだということを物語っているからです。

雲は通常、地上から12000mあたりまでの「対流圏」といわれるところにできますが、〈夜光雲〉は常識を覆します。

なんと!80000mに出現する、「最も上層にできる雲」。ほとんど宇宙ですね。

こんな雲はもちろん限られた地域でしか見られませんが、【空と雲の不思議】には日本で(しかも東京で!)見られたことが写真付きで紹介されています。

 2017年の夕方だそうです。しかしこの夜光雲種子島から打ち上げられたロケットからの排気(水蒸気)が中間圏で”雲”となり、沈んだ太陽の光に照らされたいわば”人工雲”。

この不思議な雲の生成メカニズムはまだ解明されていない点があるそうです。

「劇的な雲たち」からも取り上げたいものが。タイトル〈劇的なレンズ雲〉。南大西洋のサウス・ジョージア諸島もレンズ雲の産地なのでしょうが、「劇的」というだけあって、舞台の背景画みたいに見えます。

遠近法なのでしょうが、遠くのかなたから手前にレンズ雲が大きく広がっています。著者は「造形美」と捉えますが、私には逆光でどす黒く、夜明けの光で片方が赤黒く光ったそれは、やっぱり不気味に見えます。〈ハワイのUFO〉よりコワイ🤐でもここにも“ユニーク”な要素が。

4頭の「若いオットセイ」が写っているのです。「大きな体でポーズを気取った」彼らのうち2頭は上を見上げています。何を考えているんでしょうかね~。

空の奇妙さとの好対照で、確かに不気味さが和らぎます。

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〈劇的なレンズ雲〉は風に流されているのか、かなり形が崩れていますが、〈白く長い雲の国〉に表現されたレンズ雲はとても美しいです。

ニュージーランドは正にレンズ雲の工場だ」と著者は言います。「局地的な現象」のレンズ雲も「ここではごく普通の光景」。タイトルの白く長い雲の国は、ニュージーランドの島々のこと。

何層かのレンズ雲は上空にいくにしたがって大きく見え、山頂に雪をかぶった山脈と美しいコラボをしています。なごみますね~

驚くべきといいながら、結局最後は穏やかに終わりたいんですね私😋