仕事以外、なかなか外出できない日が続きます。でも、家でだって自然観察はできます!
私は木が好きなので(というか植物全般)、ご紹介する本書などをめくってみるのが楽しいです。
特に本書は、木だけじゃなく、それにかかわりのある他の動物、そして人間は「五感」を使って観察が楽しめるよう工夫されています。
フィールドワーク用に巻末には、直接書き込めるような「樹木観察ノート」がおまけについていますし、あくまで実践用としての想定がなされています。
私は五感に着目して、”想像フィールドワーク”を本書で実践してみたいと思います。
ちなみに五感とは……(いまさら言うまでもなく)、ここでは葉を近くで見る・触る・嗅ぐ・食べる(実)・聴く(葉や周りの音)です。
著者の林さんが教えてくれる樹木観察のポイントは、①全体を見る②葉を見る③葉以外(樹形・樹皮・花・実など)の特徴を見る、そして最後に五感を発揮するというもの。
葉っぱで樹木を分類しているのですが、それにはたった4つのカテゴリー分けで検索できるようになっています。この4つをさまざまに組み合わせによって、いろいろな種類の樹木が存在しているのが分かるので、それは驚きです。
地域によって身近な樹木は異なりますが、約400種紹介されています。
想像といっても少しでもリアルさが感じられるよう、その中から実際に見たことがあるものを中心に厳選してみました。”この樹木はそうだったのか!”と思ってもらえるものを選んだつもりですが、みなさんが見たことがあるんじゃないか、と思うものを多く取り入れたつもりです。
書籍データ
【葉っぱで見わけ五感で楽しむ樹木図鑑】林将之 編集:ネイチャー・プロ編集室 ナツメ社 2014年4月3日初版
では4つのカテゴリーとは何か?
①葉っぱ全体の形②葉のふちの形(鋸歯があるか全縁か)③落葉するか常緑か④枝に対しての生え方(互生か対生か)
最もバラエティがあるのは①です(広葉樹)。まず、単葉(たんよう)に切れ込みがあるか。不分裂葉と分裂葉。
複葉(数枚の小葉がついて、1枚の葉を構成するもの)は、掌状複葉(しょうじょうふくよう。手のひら型)、
三出複葉(さんしゅつふくよう。3枚の小葉で構成。本書では掌状複葉に含まれる)、
羽状複葉(うじょうふくよう。葉軸に小葉が鳥の羽のようにつく)。
ちなみに、複葉の小葉は一見すると1枚の独立した葉っぱに見えますが、葉柄の付け根に芽があるかないかで見わけられます。小葉には芽がありません。
②はのこぎりのようなギザギザがあるか、なめらかか。④は互い違いが平行か。
このうち、針葉樹は複葉と②④はありません。
こんだけ複雑ですがさらに、1本の木で違った特徴が同時に出る種類もあるので、かなり複雑((((;´・ω・`)))
そこでまず、そんな変わり種をいくつかピックアップして見ちゃおうと思います。本書にはなんの木か分からない時のための「お助けインデックス」があって、その中から選んでいます。(花期と果期は関東地方の平地を基準としています)
樹木は宇宙だ!
こんな複雑さを見るにつけ、そう思います。まず①を。
カジノキ〈梶木〉
クワ科カジノキ属 樹高:10m前後 花期:5、6月 果期:7、8月 分布:原産国不明
この樹木は、分裂葉に分類されていますが、不分裂も混在します。そういうのはいくつか存在しますが本種を選んだのは、「原産国不明」のナゾの木だから(いきなり、見たことがあるかでなく恐縮ですが^^;)。
その異なる葉の写真が並んでいます。両方とも鋸歯がありますが、分裂の方は3つに分かれています。とても同じ木から生えたとは思えないです。素人じゃ絶対わからない(;゜0゜)互生ですが時に対生することもあるそうですw( ̄o ̄)w
いくつか同じクワ科で葉が混ざる樹木がありますが、見分けとしては葉柄も含め、全体に毛が密生しています。表面は短い毛でざらざらし、裏はやわらかい毛でビロード状に生えます。
日本では和紙の原料として栽培され、それが野生化しているようで自生としては確認されていないらしいです。果実は赤く放射状の形になり、甘いそう。五感のうちの「食べる」で確認できます。
ヤマモモ〈山桃〉
ヤマモモ科ヤマモモ属 樹高:5~15m 花期:4月 果期:7、8月 分布:関東地方南部~沖縄
たまに行く公園に植えられています。ホントに普通の公園に、こんな”野生”っぽい木があるなんて、最初はちょっと驚きました(でも本書を読むと、けっこう街路樹や公園樹として植えられているみたいです)。ちなみにこの公園はいろいろな木が植えられていて、この後出てくる樹木もここで見かけるものがあります。
ヤマモモは②で基本全縁ですが、鋸歯が出てくることもあります。でも写真で見る限り、ほとんど目立たないです。
形自体は不分裂、葉先が少し尖った細長い倒卵形で、枝先に密につきます(互生)。そして常緑。
まぁ、ヤマモモは何といっても実ですよ。ここの木も実をつけます。それが地面にいっぱい落ちているのを見かけますが、“もったいない”と思います(;д;)拾っちゃおうか、と思ってもいまだ実行していません。さすがにコンクリでつぶれているのは拾う気になれませんし……。
ツツジ科ツツジ属 樹高:1~2m 花期:4、5月 果期:9月 分布:園芸品種
通勤で降りる駅前に植えられています。今の時期、見事なショッキングピンクの花が満開です^0^
枝先に集まって生える、長い倒卵形の葉は毛が多いためか、薄い黄緑色で常緑にしては表面がてかっていません。葉先は針のように尖ります。
”常緑”と書きましたが、実は「半常緑樹」。「下部の葉は紅葉してから落葉」し、「枝先の葉は落葉せずに残」ります。
和名は古くから長崎の平戸で栽培されていたのが由来。1つの品種名ではなく、ツツジ類の園芸品種群。
つながっている生き物(クマバチなど)に、花粉を受粉させるため花の形は、奥に蜜を溜めているラッパ型。
ミソハギ科サルスベリ属 樹高:3~9m 花期:7~10月 果期:9~11月 分布:中国原産
ちょくちょく行く雑木林型の公園に植えられています。これはなんといっても、つるつるの樹皮が特徴で、くねくねと曲がる幹とともに、木登りが得意なサルも”滑りそうだから”サルスベリ。
淡いピンクの花も枝先にたわわに咲き、なかなかボリュームがあります。花期も4ヵ月ほど楽しめ、別名の由来になっています。
問題の葉ですが、カテゴリーは互生になっていますが、ちょっと変わった「コクサギ型」(2枚づつが交互につく)で、これが対生になることもあるそうです。
葉っぱ自体は丸みのある卵型で、先端がくぼむことが多いもの。
不分裂・鋸歯・落葉・互生
さて、”変わり種”を見てきましたが、ここからはちゃんと(?)カテゴリーに分類されるものを見ていきます。
コナラ〈小楢〉別名:ハハソ、ホウソ
ブナ科コナラ属 樹高:10~20m 花期:4、5月 果期:10、11月 分布:北海道~九州
日本の雑木林を構成する二大巨頭の1つ。
どうしてかは薪や炭の原料を得るため、さかんに植えられたのです。それが今や使われなくなったため“放置状態”なんです。繰り返し伐採されて健全な雑木林が維持されてきたのに。
現在、関東の林は常緑広葉樹にとって代わりつつあるそうです。
ブナ科の実「どんぐり」は昔、落ちているのを子どもの頃よく拾いました。そんな思い出をお持ちの方もたくさんいらっしゃるでしょう。
葉は、先にいくほど幅広くなる倒卵形で毛がある事もありますが、変異もあります(コナラも複雑ですね)。
つながる生き物は、どんぐりを巡り昆虫から鳥類、哺乳類とさまざま。人類だって、縄文の時にお世話になりましたU_U
「貯食」のため埋められたどんぐりの写真がありますが、その場所が樹皮のすきま。芽生えたらどうなるんだろうO_O
クヌギ〈椚・櫟〉別名:ツルバミ
ブナ科コナラ属 樹高:10~15m 花期:4、5月 果期:翌年の10、11月 分布:本州~九州
本種がもう1つの巨頭。大きな木を見る時はどうしても樹皮が先に目がいきますよね。二大巨頭は似ているんです。縦に裂けて盛り上がっています。
葉は全く違っていて、これで見分けるのが実は一番手っ取り早いです(#^.^#)コナラよりも大きくて、細長く鋸歯が針のようにつんつんしています。表の緑色も濃い感じ。林さんは「クリに似ている」とします。
ちなみにどんぐりは「2年生」で翌年に実ります。
ハルニレ〈春楡〉別名:ニレ、エルム
ニレ科ニレ属 樹高:20~30m 花期:4、5月 果期:6~8月 分布:北海道~九州
絵本のせいか何となく北海道のイメージがあります。実際、冷涼な山地に生えて、北海道に多いらしいですが、街路樹や公園樹としても、沖縄を除く全国に分布しているようです。
葉は左右非対称で歪み、表裏に毛がありざらつきます。鋸歯が細かいです。近縁にアキニレがあり、その名の通り、それぞれその時期に花が咲きます。
ケヤキ〈欅〉別名:ツキ
ニレ科ケヤキ属 樹高:20m以上 花期:4、5月 果期:10月 分布:本州~九州
これも通勤で降りる駅前に何本か植えられています。その他、会社の近くの雑木林にもあります。そこで名前の由来が「けやしき木(けやしは美しいの意)」からきているのを知りました。ほんとに美しい樹形ですね
.゚+.(・∀・)゚+.
今は清々しい若葉をつけて美しさが増しています。葉の形も負けじと整っていて、ピンと伸びた主脈と側脈(水分や養分が通る、血管みたいなもの)、丸みを帯びた鋸歯も優雅。表に細かい毛がまばらに生えますが、表裏ともざらつきます。
樹皮は若いうちは青みがかった銀灰色で、老木になるとうろこ状に剥がれます。駅前のは剥がれているので、老木と分かります。駅前の歴史を見つめてきたんですね。
果実は小さく茶色で目立たないのですが、枯葉がついた枝ごと落ちて風に乗るそうです。そういえば果実って見たことないなぁー。
ウメ〈梅〉
バラ科アンズ属 樹高:3~6m 花期:2、3月 果期:6月 分布:中国原産
好きな樹木です^_^春に先駆けて咲く、花の香りばかり注目して、あとから出てくる葉っぱはあまり注意して見てこなかったですX_X
葉先がすっと伸びる卵型、あるいは倒卵形。葉柄は赤く、裏の葉脈(主脈と側脈)に毛が多いです。
不分裂・鋸歯・落葉・対生
ガクアジサイ〈額紫陽花〉
アジサイ科アジサイ属 樹高:1~3m 花期:6~7月 果期:10月 分布:本州と四国の海岸沿いの一部
本書ではアジサイ類として3種まとめて紹介されてますが、「アジサイ」は品種改良された園芸種。実はできますがほとんどタネはできません。花に見えるところは”本当の花”ではないので。家の敷地にあるのは取り上げた野生種で、それをご紹介します。
本来の花は中央に集まった小さいもの。それを「装飾花」が囲みますが、和名の由来は装飾花を“額縁”に見立てたものです。なかなかウマい名です。
分布はもちろんありますが、房総や伊豆などの海岸の一部に自生して、本当の野生種はとても少ないそうです。
葉っぱはラグビーボール型で、厚みと光沢があり、しわが多いです。鋸歯は曲線的で不揃い。
不分裂・鋸歯・常緑・対生
アオキ〈青木〉別名:アオキバ
アオキ科アオキ属 樹高:1~3m 花期:3、4月 果期:11~4月 分布:北海道南部~沖縄
家の近くの冬の雑木林を歩いていると、大型の楕円形で鋸歯も大きい、ひときわ緑に輝く葉と、真っ赤な実が目を引きます。素人でも分かりやすい樹木でしょう。
「若い枝と幹は緑色なので、全体的に濃い緑一色の樹姿といった印象があり、和名もこれに由来している」と林さん。
江戸時代から庭木として人気です。実は鳥が食べますが人気がないそうで、残ることが多いんですが、真冬にヒヨドリが食べるそうです。つながっている生き物ですね。私もサルスベリのある公園で、この鳥が食べているのを見たことがあります。でもすぐに食べなくなり、じっとして、しばらくしたら行っちゃった。
不分裂・鋸歯・常緑・互生
チャノキ〈茶ノ木〉別名:チャ
ツバキ科ツバキ属 樹高:2~3m 花期:10、11月 果期:翌年の9月 分布:中国原産
言わずと知れたお茶の原料。花は雄しべが密生した黄色が目立つ白い花。葉は私たちが目にするのは、乾燥した熟成のものなので、生葉を見るのは新鮮ですね。
鋸歯は鋭くはないけれど目立ちます。側脈が凸凹していて「鍛えられた腹筋」、つまり葉がシックスパットしてる!?または「亀の甲羅」との表現も。
不分裂・全縁・常緑・互生
クスノキ〈樟・楠〉別名:クス
クスノキ科クスノキ属 樹高:20m以上 花期:4、5月 果期:10、11月 分布:関東地方~九州
幹がゴツゴツして枝が曲がりくねった、物語に出てきそうな迫力のある巨樹を見たら、たいがい本種かもしれません。なんといっても、国内の巨樹の上位はクスノキが占めているといいます。
家の近くの別の公園にも何本か植えらえていますが、いずれも巨木でなかなかの迫力。覆いかぶさるような枝ぶりで、夏場の日陰を提供してくれます。
葉は先が細長く尖り、全体的にはシンプルですが、葉身の基部の葉脈が3本に分かれる「三行脈(さんこうみゃく)」はクスノキの仲間の特徴。
そして、かつて樟脳作りに利用されていたことからも分かりますが、「薬っぽい香りと柑橘系の香りを合わせたような、カンフルの香り」を持ちます。長寿の木が多いのは、この防虫効果があるからとされているみたいですが、アオスジアゲハの幼虫は葉を食餌とします。
ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属 樹高:1~2m 花期:3、4月 果期:6月 分布:中国原産
家の近くの道路際に、こんもりとした樹形を見せてくれますが、今の時期は周りの雑草が生い茂って、ほとんど目立たなくなってしまいます。
でも芳香の季節になると、例えば早朝、突如として爽やかな香りが漂って、この木の存在に気づかされます。思わず立ち止まって、ずっと香りを嗅いでいたいです( ^ω^ )道路脇なんてもったいないくらい。でもそんな時は大体通勤途中だったりします~_~
その花は小さな手まり状で、花と花が等間隔に咲いているように見えて、姿もかわいらしくていいです。
葉っぱは細く、葉先へ行くにしたがって幅広くなる倒卵形で、表裏とも側脈がほとんど見えませんがしわが目立ちます。枝先に集まって車輪状につきます。室町時代に渡来しました。
不分裂・全縁・常緑・対生
モクセイ科モクセイ属 樹高:3~6m 花期:9,10月 果期:なし 分布:中国原産
上のジンチョウゲと初夏のクチナシと並んで、三大芳香花。これも通勤途中の民家の敷地に植えられています。家の近所にもあるらしいけど、香りだけで姿はいまだに確認できていません。それだけ遠くへ香りが漂えるという訳ですね。
猛暑の後にこの香りが漂ってくると、“秋が来た”と感じるとこができます。
葉は常緑らしく堅い感じで、なめらかな光沢があります。葉先は細長くのびて、縁が波打っているのが特徴。僅かに葉先側に鋸歯が出るタイプもあります。
香りがそれほど強くないギンモクセイの「変種」と言われています。
不分裂・全縁・落葉・対生
ロウバイ〈蠟梅〉別名:カラウメ
ロウバイ科ロウバイ属 樹高:2~4m 花期:12~2月 果期:7、8月 分布:中国原産
ここからはしばらく家の敷地に植えられている木が続きます(恐縮です-_-)
本種も芳香樹です。真冬に黄色い小さな花から漂う、甘い香りにウットリします(´∀`*)「蠟梅」とは言え、それほど梅に似てるとは思えないけど、全体の姿が似てるのかなー。「蠟」は「花がロウ細工のよな質感」だから。確かにちょっとテカった感じ。
今は若葉が茂り、陽の光を受けると本当に爽やかで清々しく見えます。その葉っぱは明るい緑色で、側脈も等間隔ではっきり見えます。紡錘形で表面はざらついていて、葉柄は短いです。
ミズキ科サンシュユ属 樹高:4~8m 花期:4、5月 果期:9、10月 分布:北米原産
今まさに、濃いピンク色の特徴的な花が満開です。でも花びらに見えるものは「総苞片」という葉の一種。本当の花は中心部に集まるごく小さいもの。
実は2本植えてあるのですが、数年ほとんど花をつけなかった1本が、今年はなぜかいくらかつけてくれました(」*´∇`)」布団を干すとき、すぐそばに植えてあるその木の花粉がついちゃったりします。でも嬉しい。
秋の真っ赤な実も印象的。鳥が食べやすいような楕円形ですが、結構残っていたりします(アオキに状況が似てます)。
もう1つのポイントは樹皮。縦に細かく、小さい亀の甲羅のように裂けます。でも家の2本は、それぞれ微妙に違っていて、これも個性があるようです。
葉は卵形で、カーブを描いて伸びる側脈が目立ちます。早秋の紅要も見事。
不分裂・全縁・落葉・互生
ハナズオウ〈花蘇芳〉
マメ科ハナズオウ属 樹高:2~4m 花期:4 果期:9、10月 分布:中国原産
植えているくせに、長く名前も調べませんでした+_+今は枝に紅紫色の花が咲いていますが、去年よりちょっと少ない感じ。
名の由来は「蘇芳染め」という染め物に花の色が似ているため。
葉っぱは葉柄の両端が膨らむ、逆ハート形。光沢があります。裏は葉脈が、細かい網目状に見えます。
ブナ〈橅 山毛欅〉別名:シロブナ、ソバグリ
ブナ科ブナ属 樹高:20~30m 花期:5月 果期:9、10月 分布:北海道南部~九州
日本の森の象徴的な樹木。著者は「森の女王」といいます。日本固有種。本種を主役にした写真集も多いです。
葉はふちが大きく波打ち、まっすぐに伸びた側脈が波打つ谷に向かっています。同じ仲間のイヌブナより側脈の数が少なく7~11本。林さんは、「『セブンイレブン』と覚える」と良いといいます^.^
私にはこの波打つ形が、どうしても福島県で買ったお菓子を連想させます(名前は忘れちゃいました*_*)。
幹はなめらかな灰色ですが、よく地衣類がついて美しいまだら模様になります。これも特徴的です。北海道大学の植物園で見たブナは、ほとんど地衣類がついていなく、一瞬ブナじゃないのかと思ったくらい。環境の差でしょうか。
保水力が高く、「緑のダム」と呼ばれます。つながっている生き物は、クマ。秋のどんぐり、冬眠から覚めた春は新芽を食べます。これには整腸作用があるらしいです。別名のソバグリは、実がそばに似たどんぐりだから。
分裂・全縁・落葉・互生
アオギリ〈青桐〉
アオイ科アオギリ属 樹高:10~15m 花期:5、6月 果期:8、9月 分布:本州南部、四国、九州、沖縄。中国原産
春先だったので、まだつぼみの状態でした。ひょろっとしてちょっと弱々しい感じ。灰色っぽさが増してましたが、でも緑が残る幹に、甲虫の抜け殻が張り付いていたのが、他の生命を呼び寄せる”力”を感じました。
その幹はシラカバ、ヒメシャラと並んで三大美幹木となっています。葉っぱは葉柄が長く葉身も大きく、全体で30㎝くらいはあり、3~5に裂け、先は尖ります。若い葉は、1m近くになることも!
実がとても変わっていて、熟す前に裂けて皮が舟形になり、種子が2つほど対角について「ボートに乗っているかのような奇妙な形」。一見、水に流れていくかのように思いますが、風に乗って宙を舞うようです。
分裂・鋸歯・常緑・互生
ヤツデ〈八手〉別名:テングノハウチワ
ウコギ科ヤツデ属 樹高:1~3m 花期:11、12月 果期:4、5月 分布:関東地方~沖縄
再び家の庭に植えられている樹木です。真上から見ると、葉が輪状に付いているのが分かり、何かのデザインに使いたいくらい美しいです。
別名にもなっている、天狗が持つ羽団扇のような大きな葉っぱが目につきます。20~40cm、葉柄も30cmにはなります。名前は「八手」ですが、実際は7~11裂で、ほとんどが9つに裂けます。8裂はまれだそう。
今は黒っぽい小さな丸い実がなる時期です。花は冬に咲く貴重なもので、小春日和には虫たちが蜜を吸いに来るのが見られます。“憩いの場”ですねー。
自生地は海岸沿いの林。日陰でも育ちます。家の近くの雑木林にも植えられていて、2m近くに育っています。
分裂・鋸歯・落葉・互生
モミジバススカケノキ〈紅葉鈴懸〉別名:プラタナス
スズカケノキ科スズカケノキ属 樹高:20~30m 花期:4、5月 果期:10、11月 分布:雑種
ヤツデと同じ雑木林の、ちょっと離れた道路沿いに植えられています。とにかく、高木です。そして葉っぱが巨大。
実はアメリカスズカケノキとスズカケノキの雑種。人口交雑で明治末に取り寄せられたといいます。意外に古い。なので両種の間をとった特徴が見られます。本書では、葉・樹皮・果実と3種を写真で見比べられるようになっていて分かりやすいです。
モミジのような葉には切れ込みがあり、モミジバの深さはちょうど中間(もちろん変異もあります)。幅自体は広く、鋸歯は粗めで尖ります。
樹皮はうろこ状によく剥がれ、緑色があらわれまだらになります。果実も2種の中間で、一枝に1~3個ぶら下がります。3種は「プラタナス類」としてまとめられ、モミジバもアメリカも別名は同じプラタナス。この学名の方が親しまれているとも。
分裂・鋸歯・落葉・対生
イロハモミジ〈以呂波紅葉〉別名:タカオカエデ
ムクロジ科カエデ属 樹高:10m前後 花期:4、5月 果期:7~9月 分布:東北地方南部~九州
紅葉と言えば、これですね。でも、新緑の頃も美しいです(* ´ ▽ ` *)名の由来は5~7つの裂片を、「いろはにほへと」と数えたから。数えるのにこの樹木を選ぶところが、なんとも風流。
実も美しくておもしろく、淡紅色の“プロペラ”みたいな形です。葉っぱとイメージがなんか合わないですが。熟すと茶色になって2つに分かれ、ひらひらと回転します。
花は印象にはないですが、葉が伸びると同時に真っ赤に咲くそうです。赤いなら目立ちそうですが……。
つながっている生き物はコゲラやアトリなど小鳥がやって来るそうですが、葉や実を食べるのではなく、木につく虫を食べるそうです。
羽状・全縁・落葉・互生
ネムノキ〈合歓木〉別名:ゴウカン(合歓)
マメ科ネムノキ属 樹高:10m前後 花期:6、7月 果期:10~12月 分布:本州~九州
ひさびさ、通勤で降りる駅前の信号機脇に、何の脈絡か分かりませんが植えられています。数年前からふわふわとした、淡いピンク色の特徴的な形の花が咲いているのを見ていたので、ネムノキと分かりました。
葉は羽状複葉のなかでも複雑な、葉軸からさらに軸が出る2回偶数羽状複葉。葉軸の先端に葉がつきません。これは「直感的に見分けられる」。
マメ科植物によくみられる、暗くなると小葉が閉じる就眠運動が名前の由来。さすがに通勤途中でその姿を見たことはありません。なぜ就眠運動をするのかの理由は不明です。
針状(束)・常緑
スギ〈杉〉
ヒノキ科スギ属 樹高:25m以上 花期:3、4月 果期:10、11月 分布:本州~九州
日本の針葉樹の代表。花粉で何かと悪者扱いですが、「林業上最も重要な樹種」。日本文化に深~く関わっています。建築材を始め、日本酒の蔵元の軒先に吊るされる杉玉なども。
意外に自生は少なく、目にするのは植林されたものが多いです。とにかく真っ直ぐに伸び、「直木(すき)」と呼ばれていたのがなまったのが名の由来です。
葉は1㎝ほどの鎌形でけっこう鋭く、うかつに触るとイタイ>"<。それが小枝にらせん状についています。枯れると枝ごと落ちるので、歩いていると見かけることがあります。
鱗状・常緑
ヒノキ〈檜・桧〉
ヒノキ科ヒノキ属 樹高:25m以上 花期:4月 果期:10、11月 分布:東北地方南部~九州
針葉樹のもう1つの代表。これも自生するものは少ないです。スギに次いで多く植えられています。材は香りよく、リラックス効果バツグン!
鱗状の葉は、その1片が1枚の葉。先は尖らず丸みを帯びています。裏に白い「気孔帯」というものがあり、アルファベットの”Y”に見えるのが見分けるポイント。同属でサワラがありますが、こちらはHに見えることから、林さんは「サワラないでエッチ」と覚えると良いといいます(=∀=)
昔、ヒノキで火を起こしたことから「火の木」と名付けられたそうです。古い付き合いですね。
針状(束)・落葉
カラマツ〈唐松〉別名:ラクヨウショウ(落葉松)
マツ科カラマツ属 樹高:20m以上 花期:6月 果期:10月 分布:東北地方南部~中部地方
針葉樹で落葉する日本産唯一の樹木です。私は上高地で並んで生える姿を写真集でよく見るので、そのイメージが強いです。
実はスギやヒノキのように、人工林も形成されています。北海道では、防風林として植林されているそうです。
黄葉する姿が、すらっとした樹形とともに美しいです。
これもまた針のような1片が1枚の葉。それが輪状につきます(長い枝ではらせん状)。長さ2~3cmで柔らかめ。
針状(羽)・落葉
メタセコイア 別名:アケボノスギ(曙杉)
ヒノキ科メタセコイア属 樹高:25m以上 花期:2、3月 果期:10、11月 分布:中国原産
これもクスノキやヤマモモと同じ公園に植えられていて、おそらく一番の樹高だから、この場所のランドマークになっています。カラマツと似てすらっとした樹形で目に留まりやすいです。
「生きている化石」として本種が発見された時はニュースになりましたが、今や、この後紹介する木と同じく、身近な存在になりました。
葉はやわらかく、2~3㎝ほどが側枝という葉軸のような枝に対生します。もちろん、1片が1枚の葉です。落葉するときは、この側枝ごと落ちます(側枝自体も対生します)。
特殊・落葉・互生
イチョウ〈銀杏〉別名:ギンキョウ
イチョウ科イチョウ属 樹高:25m以上 花期:4、5月 果期:10、11月 分布:中国原産
中国は「生きている化石」が多いですね。なんか羨ましい¬_¬
三味線のバチみたいな形の葉は、植物オンチの人でも見間違えないでしょう。広葉樹でも針葉樹でもないイチョウもじつは分裂と不分裂があります。
秋の黄葉はご存知と通り、すばらしく見事!街路樹は枝ぶりが狭苦しい感じがするものもありますが、広々とした場所では大きく枝を広げ、美しい樹形になります。
その街路樹として、日本一の多さを誇りますが、野生化しているものはないと思います。
樹木の葉を取り上げた本は、今回初めてなので多くの木をご紹介させていただきました。
と言っても、少なくとも自分にとって身近な樹木ばかり。あなたにとっても身近であってほしいです。そしてこれを機に、その身近な“美しい生命”をじっくり見つめる機会ができる事を願います。